2023.10.08 23:09#4. 化石化した on foot![2023.10配信] 10月になり、急激に寒くなってきましたね。皆さんいかがお過ごしでしょうか。私は、埼玉慶友会(慶應義塾大学通信教育課程の公認学習会)に所属していて、そこのメーリングリストでこの記事をメルマガ配信させて頂いているのですが、予想以上に多くの方が読んでくださっていることを知り、嬉しく思っているところです。 さて、本題です。皆さんは、「なぜ両足で歩くのに on foot というのだろう?」と疑問に思ったことはあるでしょうか。例えば、He is traveling around the country on foot.(彼はその国の各地を徒歩で旅している。)[注1]において、on foot は「徒歩で」を意味するイディオム(慣用表現)です。一般に「徒歩で」という...
2023.09.10 09:42#3. 異綴りキング through ![2023.09配信] 今回は、「綴り字の歴史の物語」をタイムトラベルしようと思います。時は、後期中英語 (1300--1500) です。 まず、現代風の英語の綴り字体系は、15世紀のウィリアム・カクストン [注1] の活版印刷の普及を経て、1650年頃にその原型が固まりました。それから約1世紀後の1755年にサミュエル・ジョンソン [注2] の辞書が現れる頃には標準綴り字がほぼ確定した、とされています。 また、活版印刷以前、書物の複製は写字生により手書きで行われていました。当時はまだ、話し言葉にも標準英語はなく、方言も多様で、写字生が文章を書き写すときには、それぞれの方言の発音に即した綴り字をあてて表現していました。 したがって、後期中...
2023.09.10 08:59#2. 英語史はタイムトラベルを楽しむ学問![2023.08配信] 今回は、前回とりあげた「不定冠詞 a と an の使い分け」についての説明を題材に、共時態と通時態の観点から英語史の醍醐味について考えてみたいと思います。 まず、スイスの言語学者ソシュールによると、共時態とは「時間軸上の一定の面における言語の状態」をいい、通時態とは「時代の様々な段階で記述された共時的断面同士を比較しその間に生じた変化」のことをいいます。例えば、「不定冠詞 a と an の使い分け」について考える場合、「通常は a で、後続の単語が母音で始まる場合に an になる」という説明は、現代英語における共時的な解釈によるものです。一方、歴史的視点による「基本は an で、子音連続回避のために子音の前では n が脱落して a になる...
2023.09.10 03:49#1. やる気スイッチを押した one → an → a の衝撃![2023.07配信] 私が補講塾で英語を教えていた頃、急遽代講で呼ばれたクラスがあって、ノートも持たずにやってきて授業中にゲームをして講師に絡む生徒3人と出会いました。教室へ行ってみると「今さら英語なんてやったってなあ…俺たちアタマ悪いし」と言って、ゲームしながらお菓子食べてる…。しばらく雑談をしていると、生徒の1人が突然「なんで a と an があるのか教えて」と言ってきたので、このことを教えました。するとどういうわけか、彼らは「俺、本当は◯◯高校へ行きたいんだ。間に合うかな。」と口々に言い、ワークを開いて問題を解き始めました。そして次に授業に入ったとき(担当にされてしまった)、彼らは英単語をたくさん書いたノートを持ってきました。そんな思い出があり、このテーマを最初に選...